1.地下空間の水害対策
三大都市圏をはじめゼロメートル地帯等の低平地に地下街等が発達しており、浸水に対して脆弱です。地下空間は、地上の状況が把握しにくく、氾濫水が一気に流入する、避難経路が限定される等の理由により、浸水に対して非常にリスクが高い空間です。そのため、重点的な対策が求められています。
事例1 広島地下街開発株式会社(広島県)
■背景/高潮、外・内水氾濫による紙屋町地区地下空間施設への浸水被害の防止、軽減を目的として、広島地下街開発が中心となり、地下街等の管理区域を包括した紙屋町地下空間利用団体(17施設)が組織する「紙屋町地区地下空間水防連絡会」を結成。水防に関する連絡及び調整を図っている。平成24年には同協議会で「紙屋町地区地下空間 避難確保・浸水防止計画」を策定し、公表している。
■取り組みの内容/水防連絡会での情報伝達訓練実施のほか、防潮板、防潮シート設置訓練を定期的に実施している。


●防災センター


●防潮シートの設置訓練

●防潮板
2.要配慮者施設の水害対策
台風など大雨の影響により、病院や介護施設など要配慮者利用施設が浸水し、送水ポンプの浸水による断水や、非常用電源も燃料ポンプの浸水で稼働せず全館停電となる等の人命に係る被害が生じる可能性が高まります。要配慮者利用施設では、非常電源の確保や、避難計画に特段の注意が必要となります。
事例1 株式会社フジ(愛媛県)
■背景/想定外の事態にも対処ができるよう平成24年に事業継続計画(BCP)を策定し従業員教育を実施するほか、大規模災害時に避難誘導等で必要となる器具を各事業所で設置している。また緊急初動体制の見直しを行い、従業員には携帯可能な防災ハンドブックを、マネジャーには緊急対応マニュアルの小冊子を配布するなど非常時における体制整備を徹底している。
■取り組みの内容/行政や地域団体、企業と連携し物資供給や一時避難場所としての使用に関する協定等を締結している。事業所ごとに災害対策組織を編成し総合防災訓練を実施したり、各店店長およびマネジャーが防災士の資格を取得し、店舗や地域の防災意識向上を図る。平成25年には商業施設初となる「災害対応型カップ自販機」を導入(平成28年2月現在32店舗に設置)し、災害時にはお客様に無償で飲料を提供する。川に面した店舗では、ゲリラ豪雨による増水に備え、全出入り口に水の浸入を低減する止水シートを用意している。

●緊急事態貴重品持ち出し袋

●防災士の資格取得

●止水シート
事例2 医療法人恕風会大洲記念病院(愛媛県)
■背景/平成7年の発達した梅雨前線による肱川流域大洪水の影響により、介護老人保健施設を併設する大洲記念病院では、院内への浸水で断水や停電、医療機器の破損などの被害を受けた。また、平成16年台風16号では、床上浸水の被害を受けた。
■取り組みの内容/過去2回に渡る水害を教訓に平成18年に防水対策概要を作成すると共に外部の防水パネル、浄化槽からの逆流に対する逆支弁の設置、レントゲン、CT・MRI室の防水ドアを設置した。平成21年に建設された高齢者向け賃貸住宅(介護施設併設)では通路、玄関に手動で上がる防水壁を設置している。平成25年には、詳細な水害対策計画の策定も行っている。また、平成28年4月にオープンする大洲記念病院新々館では、外来部門を2階にし1階を駐車場とするなど、地域医療を継続するにあたり水害影響を最小限に留める設計を行っている。

●平成7年の肱川流域大洪水時の様子

●職員による防水パネル設置訓練の様子

●手動により床面高さが変更出来る玄関


●平成28年に新規オープンする
大洲記念病院新々館
3.工場・事務所等の水害対策
工場・事務所等への浸水は、長期間に渡る操業停止など事業の継続に大きな影響を及ぼすため、その事前の対策が重要となります。
事例1 株式会社東海理化(愛知県)
■背景/平成12年9月、記録的な集中豪雨により、新川が決壊し、清須市西枇杷島(旧西春日井郡西枇杷島町)に所在する西枇杷島工場が1.5メートル冠水し、生産設備、組立前の部品、出荷前の製品が浸水するなどの被害を受ける。
■取り組みの内容/9月、3月を東海理化全社の防災月間と定め、災害を想定した「生命の安全確保」「二次災害の防止」「生産復旧」を重点とした防災活動に毎年取り組んでいる。「地域共生」では、地域住民とともに周辺自治体と連携し、災害時における支援にも取り組んでいる。


●平成12年9月の集中豪雨時の西枇杷島工場構内

事例2 住友化学株式会社大分工場岐阜プラント(岐阜県)
■背景/昭和51年の9.12豪雨災害により工場施設内に30~100cmの浸水があり、ポンプ・変電所が部分的に水没。また敷地内に保管していた空ドラムの一部が外部に流出するなどの被害を受けた。
■取り組みの内容/経験をもとに、新工場建設時には、自家発電機の新規設置・電気系統室を2階以上に設置するなどの設備改良に加え、製造拠点の分散化などにも取り組んできた。また、企業における防災活動は、「地域とともに取り組む」という考え方から、定期的な工場見学の開催や社報誌等による地域住民の方々との情報交換、コミュニケーションも進めている。

●タンクヤードを設置してドラムを削減

●建屋の上に設置した変電設備

●地域住民への工場見学

●防災訓練