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地方創生 対話フォーラム

開催レポート

地方が活力を取り戻し、安心して暮らしていけることが、日本再生の大きな力になります。それが2025年6月に閣議決定された地方創生に関する「基本構想」の目標であり、その実現に向けた方策などを検討する「地方創生対話フォーラム@近畿・中四国ブロック」が2月6日、三木記念ホール(岡山県岡山市)で開催されました。会場では、地域で取り組まれている好事例の紹介など、地方創生の推進に向けた議論を深めました。

※所属・肩書・組織名などは、2026年2月6日時点のものです。
※登壇者の資料について一部非公開とさせていただきます。予めご了承ください。

全編動画

開会挨拶

開会挨拶

海老原 諭

内閣官房 地域未来戦略本部事務局長

強い経済の実現に向けて

「地方創生」は昨年、10年目を迎えました。今後は、政府の施策への理解を深めつつ、各地で進む工夫を凝らした取組を共有し、横展開していくことが重要と考え、全国5か所で対話フォーラムを開催してまいりました。今回は近畿・中四国ブロックの各府県による好事例の紹介と意見交換が行われます。「自分たちの地域で何ができるか」を考えるきっかけにしていただければ幸いです。政府としては、新内閣の下で強い地方経済を作るべく、生活環境の改善と経済振興を融合した地域の活性化策「地域未来戦略」を取りまとめる予定ですので、注目いただければと思います。

来賓挨拶

来賓挨拶

伊原木 隆太

岡山県知事
※ビデオメッセージ

地方対大都市ではなく「対話」を

岡山県では地方創生を「人口減少問題への的確な対応」「本県の持続的な発展」と位置づけ、人口の自然減及び社会減対策、地域の経済力確保及び活力の維持に取り組んでいるところです。地方創生を進めるには、地方対大都市のような対立ではなく、対話が必要です。日々対話を重ねながら地域の未来を作り出している皆様方の本フォーラムにおけるお話は、地方創生のさらなる推進に向け、大きなヒントになるものと期待しております。

万代 洋士

岡山県総合政策局長

本フォーラムの成功を祈念

地方創生対話フォーラム@近畿・中四国ブロックのご成功と、ご参集の皆様方のますますのご健勝を祈念いたしまして、伊原木知事及び私からのご挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願い申し上げます。

政策説明

政策説明 政策説明
政策説明 政策説明

海老原 諭

内閣官房 地域未来戦略本部事務局長

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人口減少の中でどう活力を維持するか

地方創生10年を迎え、これまでの地方創生の検証と今後の展望を検討しました。振り返りでは、地方から若者や女性が流出する要因を分析する一方で、国と地方の役割のバランス、地域関係者が一体となった取組の不足などが反省点として挙がり、これらを踏まえて、今後の10年の方針を検討しました。 日本の人口は、2008年にピークを迎え、現在は減少局面にあります。今後当分の間は人口減少が続くことを前提に、各省庁で地方創生施策等の見直しを行い、「人口が当面減少する中での社会活力の維持、地域の活性化」を考慮に入れた地方創生の「基本構想」を昨年6月に閣議決定し、昨年末には「地方創生に関する総合戦略」を取りまとめました。

地方創生の主役として地域の皆さんに期待

総合戦略では、社会変化に合わせて、①強い経済②豊かな生活環境③選ばれる地方の3つの政策目標を掲げて施策を進めます。 強い経済では、地方の中小企業による地域産品の海外輸出を支援することで、地場産業の活性化を目指す「新規輸出1万者支援プログラム」を推進しています。 豊かな生活環境では、遠隔診療による地域医療体制の維持、選ばれる地方では、「ふるさと住民登録制度」による関係人口の確保など、人口減少時代にも産業やインフラを発展させることで、地域の活力を維持する取組を進めています。 また、国の役割、自治体の役割、それから地域の多様な関係者の役割を見直し、国は財政的な支援や地方が活用しやすい制度への改正を進めるとともに、地域住民が地方創生の主役として活躍することが重要と考えており、今回のフォーラムも、全国の好事例を皆さんに共有するために開催しました。

「地域未来戦略」を今夏に取りまとめ予定

昨年11月に地域未来戦略本部を設置し、「経済」を切り口に従来の地方創生の取組と組み合わせ、今年6月を目途に、その全体像となる「地域未来戦略」を取りまとめる予定です。 具体的には、半導体産業など企業の大規模投資を中心に地域の産業振興を図る「戦略産業クラスター」、都道府県単位での産業振興を図る「地域産業クラスター」及び、地域に根差した産業の付加価値向上を図る「地場産業支援」の三つの類型のクラスターの推進を検討していきます。

トークセッション1

トークセッション1 トークセッション1 トークセッション1 トークセッション1 トークセッション1 トークセッション1

テーマ:地場産業・地域産業を核とした地方経済の活性化

福崎 智子

京都府

福崎 智子

NeoTAN実行委員会事務局/
京都スタイル㈱ATARIYA

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「まちびらき」の感覚でイベント実施

「NeoTAN」は、京丹後市と与謝野町で2025年に共同開催した3日間の地域一体型オープンファクトリーです。イベント名にあるNeoは再発見・再構築の「ネオ」、TANは「丹後」に由来します。具体的には、織物業や機械金属など6カテゴリー計28社が、生産現場の見学ツアーやものづくり体験イベントなどを実施しました。出展事業者は一人で営む工房から、従業員3,000人超の大企業までさまざまで、オープンファクトリーと形容していますが、「まちびらき」の感覚で運営していました。
開催に当たっては、NeoTANの「オキテ」を設けました。「新しいことは何もしなくていい。すでにあるものを可視化・言語化していく」「長く続けるためにも無理はせず、自分たちで考え、決めて、やりたいようにやる」スタンスを大切にしています。また、「とにかくみんなで集まって混ざろう」をコンセプトに、「MazeTAN」という交流会も開催しました。

巻き込み型で無関心の打破へ

NeoTANを開催して感じたのは、このイベントに「巻き込む力」と「呪縛を解く力」があったことです。地方には「仕事がない、明るい未来がない、何もない」という呪縛のような思考がありますが、それが少しずつ解けていったように思います。そして、地域のこうした取組で一番怖いのは、批判や反対ではなく、無関心です。無関心を打破するには、これら二つの力に加え、ネガティブな重みのある「課題」をみんなで気軽に取り組む「お題」に変えていくことが重要です。
その一例として、今回、子育て世代の母親たちに広報の手伝いとして、各企業を回って体験レポートを書いてもらいました。NeoTANのファンになった彼女たちが、これからさらに、NeoTANを広めてくれるのではと期待しています。

藤井 昌弘

兵庫県

藤井 昌弘

西脇・多可オープンファクトリー「もっぺん」実行委員会 代表/COME(コメ)代表

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しんどくても再生を期す

「もっぺん」は、西脇市と多可町で合同開催したオープンファクトリーで、初年度の2024年は2日間、2025年は3日間にわたって開催しました。イベントタイトルの「もっぺん」は、関西弁で「もう一回」という意味です。
西脇市は播州織の産地で、ピーク時の1987年には約3億8,800万平方メートルもの織布を生産し、織機が一度ガチャっと音をたてると1万円儲かる「ガチャマン」と言われるほど当時は好景気でした。しかし、2023年の生産量は約1156万平方メートルまで落ち込んでいます。現場で働いている後継者が、そうした「昔はよかった」という話をよく聞かされます。「もっぺん」には、西脇市・多可町が歩んだ歴史を背景に、しんどいこともあるけれど今もう一回立ち上がろう、「もっぺんがんばろか〜」という意味を込めています。

「見つめなおし、出逢いなおす」

参加事業者は1年目、2年目ともに25事業者で、織物関係のほか、農林業の会社、鉄工所などにも参加いただきました。当日は、織物のワークショップやクリーニング工場でのシミ抜き体験、トークイベントなどを行い、大阪の服飾専門学校から産地見学のバスツアーに来ていただきました。
イベントを通して、参加事業者にも来場者にも、「もっぺん」に込めた私たちのもう一つの想いである、「先人たちが積み重ねてきた技・知恵・伝統を大切にし、あらためて見つめなおし、出逢いなおす」を、強く感じ取ってもらえたと思います。

菊井 健一

和歌山県

菊井 健一

有限会社菊井鋏製作所 代表取締役

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和歌山も、ものづくりで盛り上げたい

「和歌山ものづくり文化祭」は、生産現場に足を運んでもらうオープンファクトリーではなく、一つの会場に出展者が集うタイプのものづくりイベントです。文化祭の企画は、弊社が2021年に大阪の日本工芸産地博覧会に出展したのがきっかけです。
この博覧会に出展するまで、理容師・美容師のはさみを製造する自社を和歌山発の工芸だと意識したことはありませんでしたし、ワークショップなんて考えも及びませんでした。しかし、博覧会会場に集った全国の職人さんたちの熱を間近で感じて、「和歌山も、ものづくりで盛り上げたい」と居ても立ってもいられなくなり、2022年に勢いだけで初開催にこぎ着けたのが和歌山ものづくり文化祭です。文化祭に触発された企業が、単独でオープンファクトリーを開催する流れも出てきています。

新しい形の地域コミュニティーが創出

会場を一カ所にしたことの良い点は、参加者がものづくりを体験しながら、トークイベントに耳を傾けられる点です。出展者にもメリットがあります。2022年から4年間文化祭を続けたことで、産地組合の枠組みを越えた新しい形のコミュニティーが生まれました。
知見の共有や近隣での受発注、コラボ商品の開発、共同採用といった取組が始まりました。さらに、経営者同士の交流が深まり、さまざまな情報交換や相談事ができる効果も現れています。新たに生まれたコミュニティーが、和歌山をものづくりのまちにしていく力になるのではないかと実感しています。

田中 英城

香川県

田中 英城

CRASSO実行委員会 事務局長/
タナカ印刷株式会社 代表取締役

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地域のものづくりを産業観光で生かす

香川県東部の東讃地区は手袋の全国生産シェアの9割を誇っており、私どもは民間主体で、ものづくりの現場を見て、体験するファクトリーツーリズムに取り組んでいます。東讃地区は2050年までに人口が2015年比で半減すると予測されており、地元でも驚かれることが多いのですが、半面、「人口減少対策は行政の仕事でしょう?」との認識が根強くあります。
これに一石を投じたのが、東讃地区にある東かがわ市の上村一郎市長でした。市長がある講演で、「いつから地域づくりは行政だけの仕事になったのか」という趣旨のお話をされ、どこか他人事だった私も、地域に根ざした会社として何かできることはないのかと考え直しました。そこで思いついたのが、東讃地区のものづくりを観光化するファクトリーツーリズムだったのです。

昨年は出展企業34社・来場者約2200人

「CRASSO(クラッソ)」という名称は、「クラフト」と、イタリア語のエース、一番を意味する「アッソ」を組み合わせた造語です。工場見学と併せて、瀬戸内の自然に育まれた食や文化を楽しんでいただくメニューも用意しています。2023年に出展企業8社・来場者約200人からスタートしたCRASSOは、回を重ねるごとにエリアや参加企業を伸ばし、昨年8月の開催では、出展企業34社・来場者約2,200人を超えるイベントに成長しました。
「ファクトリーツーリズムを自分の地域でも開催してみたいけれど、全国に誇れる産業がない」とよく言われますが、そのようなことは必要ありません。実はCRASSOで一番人気なのは、醤油屋さんであったり段ボール屋さんだったりします。様々な業種の会社が地域にあるというところが、十分コンテンツになると思います。

小谷 直正

広島県

小谷 直正

特定非営利活動法人府中ノアンテナ 副理事長/
瀬戸内ファクトリービュー実行委員会 事務局長

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景色と同じようになりわいを残す

「瀬戸内ファクトリービュー」は、2019年と2025年に開催したオープンファクトリーです。広島のものづくりが瀬戸内の海や景色のように魅力的な風景となり、地域のなりわいと景色が続いていくことを目指しています。出展企業と開催エリア、開催期間を、県東部の備後と県西部の安芸に分けている点に特徴があり、年度によってはオープンファクトリー以外の付随イベントも実施しています。2025年のオープンファクトリーでは、百年企業8社を含む28社の製造現場に約4,600人が訪れました。付随イベントとしては、ものづくりが地域の未来を描くワークショップ「Setouchi Factory View to 2050」をはじめ、大阪・関西万博への出展、トークイベントの開催なども実施しています。
オープンファクトリーを続けてきたことで現れてきた成果がいくつかあります。ものづくりに関わるために6人の移住があったこと。オープンファクトリーを契機に、10社以上の企業が通年の産業観光に参入したことです。

イベントから日常へ

通年の産業観光の強化は、イベント要素の強いオープンファクトリーから、より日常側へシフトすることを意味します。これは、広島のものづくりの未来を切り開く、「訪れる」「関わる」「続く」というプロセスの一環で、とりわけ、「関わり」の深度を深めていくことで、ものづくりが日常にクロース(close)、言い換えると近づいていきます。
オープンなだけでなく「クロースなファクトリー」を増やしていくことが、私たちの目指す「100のなりわいを残す。100の景色を残す」ことにつながるはずです。

岸田 里佳子

モデレーター

岸田 里佳子

内閣官房 地域未来戦略本部事務局 内閣審議官

地域活性化を自分ごととして連携強化を

地域活性化は行政の仕事のように捉えられがちですが、地域の皆様が「自分ごと」として進めることが大事というご示唆を頂戴しました。また、オープンファクトリーのように、敷居を下げて幅広い層に間口を広げることに勝機があると感じました。

トークセッション2

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テーマ:地方イノベーションが産む稼ぐ力、付加価値の向上

杉本 悠太

滋賀県

杉本 悠太

守山市企業連携室 係長

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役割は民間が走りやすいパスを出すこと

守山市が目指しているのは、行政が主導するのではなく、結果として「起業家の集まるまち」になっている状態を創ることです。行政にできることは「許認可」「調整」「情報発信」の三つです。これらを駆使して企業が抱える事務的な負担を肩代わりし、彼らが持つ本来の能力を存分に発揮できる環境を整えています。
こうした動きを加速させるため、私は行政の役割をサッカーの「ボランチ(中盤のつなぎ役)」と定義しています。自らゴールを狙うのではなく、一歩引いた位置から、民間という攻撃陣が最も活躍できる場所へ素早く的確なパスを出す。そんな手離れの良さとスピード感を重視した支援を徹底しています。

実証実験に起業家精神を育む仕組み

支援の結果、この5年間で、市内には民間主導のコワーキングスペースなどの拠点が5カ所誕生しました。さらに駅前には大手製造業の研究拠点の進出も決まり、地域には「何かが生まれる」という期待感が高まっています。また、全国から起業家や企業を募る実証実験サポート事業も市の取組の一つです。単に場所を提供するだけでなく、地元の学生が企業の挑戦に伴走する仕組みを取り入れたのが特徴です。若者が最先端の技術や熱意に触れる機会を創ることで、シームレスに次世代の起業家を育むことが狙いです。
自治体や地域のキーマンがリスクを共有し、挑戦者を全力で応援する。この積み重ねが、守山を起業家たちに選ばれるまちへと変えていくと確信しています。

加味 昇

大阪府

加味 昇

公益財団法人大阪産業局クロステック推進部(ソフト産業プラザTEQS) インキュベーションマネージャー・リーダー

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5Gを活用したプロトタイプをビジネスの種に

大阪産業局が運営する「ソフト産業プラザTEQS(テックス)」は、5GやAI、ロボット、IoTといった先端技術を活用し、今までにない新しいビジネスの創出を支援する拠点です。テクノロジーを「クエスト(探求)」する方々を応援したいという想いから、「作る」「育てる」「検証する」「加速する」という4つの柱を軸に取組を進めています。
その入り口となるのが、官民連携で運営する「5G X LAB OSAKA」です。ここではものづくりや医療、遠隔操縦など、5Gを活用した約30件のプロトタイプを展示しています。まずは「何ができるか」を肌で感じていただき、そこから新たなビジネスのアイデアを生み出すきっかけを提供するのが狙いです。

民間の知見を取り入れ、社会実装を加速

私たちの強みは、アイデアを形にするだけでなく、その後の社会実装までを一気通貫で支援することにあります。3年限定のインキュベーション施設でのハンズオン支援に加え、咲洲エリアや万博会場周辺を実証フィールドとして活用し、ドローンやロボットの走行・飛行試験などを強力にサポートしています。
こうした活動は、大阪市やソフトバンク、民間団体との官民連携によって支えられています。行政主導にありがちな箱物に終わらせず、民間の知見を取り入れることで、常に新しいコンテンツが生まれるシステムを構築しました。実証フィールドで生まれた数々の種を確実に社会実装へとつなげ、「大阪産業局に相談すれば社会実装できる」という信頼を確立させていきたいと考えています。

柴田 雅光

島根県

柴田 雅光

島根大学次世代たたら協創センター 副センター長

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「たたら」の精神受け継ぎ、特殊鋼を開発

島根県には、古墳時代から続く「たたら製鉄」の伝統があり、今も鋳造業を中心とする多くの金属材料関連の企業が集積しています。この自然発生的な産業クラスターを基盤に、私たちが形成しているのが「次世代たたら協創センター(NEXTA)」という組織です。
当センターでは、伝統工芸としてのたたらを再現するのではなく、その精神を受け継ぎ、航空機やモーターに使われる新しい特殊鋼を開発することにチャレンジしています。センター長にはオックスフォード大学の教授を招へいし、地方にいながら世界の最先端とつながる研究環境を整えています。

研究・教育の成果を「社会実装」

この事業は内閣府の地方大学・地域産業創生交付金を活用しています。ただ、取組を加速させる上で、大きな課題となるのが縦割り行政です。大学が地方自治体や地域の産業界と密接に連携し、産業・雇用の創出や専門人材の育成といった地域課題の解決において重要な役割を果たすためには、まず何よりも省庁の壁を取り払うことが重要です。
また、大学は「研究」で得られた知見や技術、「教育」で技能を有する学生を育成・輩出することで、社会に知を還元(社会実装)し、地域に貢献していくことが求められています。そのために研究者が研究に専念できる環境を守りつつ、学生や企業が自然に参画できる仕組みをマネジメント側が支える。こうした産学官金の密接な連携によって、島根を金属素材のグローバル拠点へと成長させ、地域の「稼ぐ力」を強化したいと考えています。

松下 正史

愛媛県

松下 正史

愛媛大学 今治サテライト長/
理工学研究科教授

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造船需要が高まり、人材確保が急務

愛媛県今治市では、国内の約20%の船を建造しています。160社もの舶用機器メーカーが集まり、世界の外航船オーナーの約30%が居住するなど、世界的に見ても稀な「海事クラスター」を形成しています。現在、世界人口の増加や環境性能に優れた船への置き換えニーズが高まっていることから、船の建造需要は急増しており、2050年まではそれが続くと言われています。生産年齢人口の減少が続く中、今治の海運・造船産業を維持・発展させるには、技術革新とそれを担う人材の確保が不可欠です。
そこで私たちは、造船・舶用機器メーカーや金融機関が連携する「いまばり船みらい振興会」を設立し、技術開発を加速させています。

「でかい×最先端」で若者に選ばれる産業へ

次世代の担い手を引きつけるためには、イメージの刷新が欠かせません。造船には「昭和の重厚長大」という印象があるかもしれませんが、私たちが目指すのは「AI×ロボット」による最先端の現場です。巨大な船をデジタル上で再現する「デジタルツイン」を活用し、自律走行ロボットやAIを駆使して造り上げる。この「でかい×最先端」というワクワクする魅力を発信し、若者に選ばれる産業へと進化させたいと考えています。
こうした取組を支えるのが、今治市と愛媛大学が一体となって進める「Town&Gown構想」です。これは街(タウン)と大学(ガウン)を融合させる地域活性化の枠組みです。例えば、愛媛大学では3年次から今治市に居住して学ぶ「海事産業特別コース」を設置し、人材育成に寄与しています。

齊藤 格久

高知県

齊藤 格久

高知県農業振興部農業イノベーション推進課 企画監(IoP推進担当)兼IoP推進室長

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データを活用した農業で収穫量を増やす

高知県は山間地が多く、耕地面積が限られています。この環境の中で、いかに収穫量を高めるかという課題に対し、ITやAIの技術を活用して農業を「見える化」する取組を進めてきました。その核となるのが、データ連携基盤IoP(Internet of Plants)クラウド「SAWACHI(サワチ)」です。さまざまな料理を一つの皿に盛る郷土料理の皿鉢(さわち)になぞらえ、園芸用ハウスでの農作業に関わる多様なデータを集約するシステムです。。
具体的には、SAWACHIに登録した生産者の、出荷量をはじめ、ハウス内の温度や湿度、さらに県内約200カ所の気象情報や全国の市況情報を収集し見ることができます。生産者はスマホやパソコンでSAWACHIにアクセスすると、いつでも自分のハウスの状態をデータで確認でき、日々の栽培管理に役立てることができます。令和7年12月末時点で、1745戸の生産者が利用しています。

産学官によるデータ活用でプロジェクト推進

SAWACHIに集約された生産者のデータは、県やJAグループの指導員と共有し、データを活用した営農指導につなげることが可能です。さらに、生産者同士がデータを共有し、アドバイスを送り合う横のつながりも生まれています。こうした取組により、令和5年の10アール当たりの収穫量は、平成12年比で約27%も向上しました。
また、SAWACHIに集まる膨大なデータを大学などの研究機関が活用したり、企業が新たな産業創出に生かしたりする動きも広がっています。県知事を会長とする産学官連携協議会を中心に、今後もプロジェクトを力強く進めていきます。

岸田 里佳子

モデレーター

岸田 里佳子

内閣官房 地域未来戦略本部事務局 内閣審議官

調整役に求められる積極性な発信力

イノベーションを生み出す地域では、産学官の間を調整するコーディネーターがスピード感を持って行動し、技術力を積極的に発信していることが分かりました。関係者間の強い信頼関係が不可欠であることも再認識しました。

トークセッション3

トークセッション3 トークセッション3 トークセッション3 トークセッション3 トークセッション3 トークセッション3

テーマ:若い世代が織りなす新たな地方の魅力創出

山本 真貴子

奈良県

山本 真貴子

株式会社icot 代表取締役

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孤独な育児をなくす場づくり

核家族化や地域コミュニティーの希薄化が進む中、出産後の母親の孤立は、深刻な社会課題となっています。孤独な育児は心身の不調につながりやすく、「産後うつ」は約10人に1人が経験するとされています。この状況を受け、母親の心身をケアしながら育児を支える仕組みとして注目されているのが「産後ケア」です。母子保健法に基づき、各自治体が主体となって推進しています。
当社が運営する葉ノ月助産院では、生駒市、奈良市、大和郡山市から委託を受け、産後ケア事業に取り組んでいます。「すべてのママにちょっと、ホッとできる時間を」をコンセプトに、助産師などの専門職が育児に関する不安に寄り添い、アドバイスを送るなどの支援をしています。施設内には、赤ちゃん連れで気軽に立ち寄れるカフェスペースや、ゆっくりと休める個室を設けています。

母親同士のつながりを生む場所

葉ノ月助産院の役割は、専門職によるサポートにとどまりません。利用者同士が交流し、悩みや経験を共有する関係が育まれています。このような、当事者が励まし合う「ピアサポート」も、育児に伴う不安を和らげる効果が期待できます。
また、運営を通じて得られた課題や気づきは自治体にも伝え、地域全体で母親を見守る体制づくりにも活用しています。さらに、カフェラウンジはイベントや交流会の会場としても貸し出し、母親たちによる地域活動の拠点としての機能も担っています。今後も私たちは、産後ケアが当たり前の選択肢として定着する社会を目指し、活動を続けていきます。

川村 諒志

鳥取県

川村 諒志

株式会社OMOI 代表取締役

ブランドづくりで地域活性化へ

「日本の地方人口が減少しても、豊かな地方を作る」というミッションのもと、当社は日本で最も人口の少ない鳥取県で、さまざまなブランドづくりに挑戦しています。2020年、最初に手掛けたのは「砂プリン」でした。粉末カラメルを鳥取砂丘の砂に見立てたこのスイーツは、現在では地域の名物として親しまれています。また、ヨーグルトや塩どら焼きなど、地域資源を生かした商品を開発し、現在は8つのブランドを展開しています。2030年までに、さらに9ブランドを立ち上げる予定です。
将来的には、「100年以上愛されるブランド」を生み出すことを目標に掲げています。その実現を通じて、鳥取県に安定した雇用を創出していきます。私はこの会社を、日本海側全体に観光客を呼び込む起点となる企業へと成長させたいと考えており、今後は、観光業や宿泊業にも事業領域を広げていく計画です。

教育で地域の底力をつくる

地域活性化には、地域で挑戦し続ける「人」の力も欠かせません。そこで当社では、社内の教育制度の充実に力を入れています。ロジカルシンキング、広報・販促、予算管理など、経営に必要な知識やスキルの習得を支援し、事業を主体的に動かせる人材を育成しています。
こうした取組の中から、独立して新たな道を歩む仲間も生まれています。人材育成の連鎖こそが、地域の持続的な成長を支える力になると私たちは信じています。

島田 舜介

岡山県

島田 舜介

株式会社ITONAMI 代表取締役

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モノ売りからコト売りへ転換

デニム好きが高じて、岡山県の大学に在学中、兄弟でデニムのブランドを立ち上げました。卒業後はキャンピングカーで全国各地の作り手を訪ね、広い視野で物事を捉える大切さを実感しました。その経験を生かし、2019年に倉敷市児島にオープンしたのが宿泊施設「DENIM HOSTEL float」です。
宿泊施設をつくったのは、デニムを売る(モノ売り)ことから、体験する(コト売り)ビジネスへと転換するためです。部屋の内装やソファー、パジャマなどにもデニムを使用し、「デニムを感じる宿」を展開しています。2023年には、築100年の古民家をリノベーションした新しい宿泊施設も開業しました。和とデニムが融合した雰囲気が外国人の方の心をつかんでいるようです。

クラウドファンディングで新しい挑戦を

最近では、JR西日本をはじめとした地元企業6社と共同で、瀬戸大橋展望台にある「鷲羽山レストハウス」を改装し、リニューアルオープンしました。看板やロゴを変更し、児島の特産品を並べたほか、食事のラインナップも充実させ、地域の活性化にこれまで以上に役立つようにしています。
資金がない中、私たちが起業できたのは、クラウドファンディングのおかげです。宿泊施設のオープンでは、地域密着型クラウドファンディング「晴れフレ岡山」の支援を受けました。自己資金が限られている若者が起業するには、クラウドファンディングの活用がよい選択肢となり、そこから新しい挑戦が次々と生まれることで、地域の可能性が広がります。

板垣 明日香

山口県

板垣 明日香

YAMAGUCHEERS!! リーダー

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学生と地域企業を応援

県内各地の大学生が集まり、「共創」をテーマに活動するプロジェクトが「YAMAGUCHEERS!!」です。このプロジェクトには、県内の若者(学生)の挑戦と企業の挑戦を応援することで、若者を理解し、支援する企業風土を根付かせる狙いがあります。
学生プロジェクトメンバーは、①県内企業を学生に知ってもらうイベントを企画・運営する「企画・運営」②企業や学生のニーズ調査から広報を担う「マーケティング・広報」③企業紹介、イベント紹介の動画制作を行う「メディア」④SNSなどを活用してプロジェクトの情報を発信する「PR」―の4つのチームに分かれて活動しています。

地元志向の学生は33.6%

直近で実施した大きな事業としては、昨年8月に開催した「キャリアミーティングin山口」があります。学生がゲーム形式で社会人と交流するフランクなイベントで、互いに親しくなることで普段とは違う会話やコミュニケーションが生まれました。12月に開いた「学生団体×企業 つながるフェス」では、学生団体がブースを出展し、そこを企業側の人たちが訪問するという新しいスタイルの交流イベントを企画しました。参加した学生団体からは「共同でイベントを開催することによって、企業とのつながりが生まれた」、参加した企業からは「挑戦と熱意に共感した」との声が聞かれました。
このほか、県内の大学生向けに「価値観・就活感アンケート」を実施し、300件の回答を得ました。「将来どこで働きたいと考えていますか」という問いでは、地元志向の学生が33.6%もいて、驚かされました。地域や企業の持つ魅力の発見が、地元で就職活動をしようとする学生を増やすと考えられ、今後も学生と地域企業をつなげる輪が広がるよう活動を継続していきます。

遊亀 聖悟

徳島県

遊亀 聖悟

株式会社あわえ 取締役/
徳島県美波町議会議員

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人口減少時代の地域モデルを

美波町では長期的に人口減少が続き、人口は約5,500人、高齢化率も約50%となっています。空き家の増加や高校の閉校など、地域を取り巻く環境は大きく変化してきました。
こうした状況は全国各地に共通する課題です。だからこそ、この町で持続可能な形をつくることができれば、他地域にも応用可能なモデルになり得ると考えています。
当社は、主に地方自治体向けに地域振興の支援を行っています。柱となるのは、都市部企業のサテライトオフィス誘致、都市や地方など複数の学校に通うことができるデュアルスクールの推進、そして地域と最新技術をつなぐ展示会事業「地域×Tech」の展開です。
サテライトオフィス誘致では、都市部企業の持つ技術やベンチャーマインドを地域に呼び込みます。デュアルスクールでは、子どもたちの学びの選択肢を広げます。地域×Techでは、自治体と企業が出会い、連携のきっかけを生み出します。

人との関わり方の選択肢を増やす

人口減少時代に必要なのは、人の数を増やすことだけではなく、人と人との関わり方を設計することだと考えています。自治体、企業、地域住民、そして個人。それぞれが自らの立場で関われる環境が、持続可能な地域づくりにつながります。
社会全体で人口が減少するなかでも、挑戦しようとする人の周りには応援する人が自然と集まります。一人ひとりが関わり方を選び、小さな一歩を踏み出せる地域であること。その積み重ねが未来をつくると信じ、私たちは事業に取り組んでいます。

岸田 里佳子

モデレーター

岸田 里佳子

内閣官房 地域未来戦略本部事務局 内閣審議官

地域の未来に向けた若者のチャレンジを応援

若い世代の方に、地域を元気づける取組を進めていただくためには、起業支援や継続的なメンター制度なども必要ではないかと感じました。地域の未来に向けた若者のチャレンジを応援、支援する「地域未来戦略」を私どもも検討してまいります。

閉会挨拶

閉会挨拶

桑原 功

山陽新聞社 代表取締役社長

地方創生の大きなうねりに期待

本日は、近畿・中四国ブロックの2府・13県から、地域の未来を担う皆様が一堂に会し、熱く、中身の濃いトークセッションが繰り広げられました。私たちが自らの地域の魅力を再発見し、足元を見つめ直す格好の機会になったかと思います。今回のフォーラムを通して知ることができました全国各地の好事例を多くの地域が共有し、自らの地域にカスタマイズしていくことが、地方創生のうねりをより大きくしていくと考えます。

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