第5章 『水防災意識社会』の再構築に向けて

『水防災意識社会』の再構築に向けて

水害と人々の暮らし

70年前のカスリーン台風では、戦後、国土が荒廃している関東・東北地方を豪雨が襲い、多くの死傷者や家屋の流出、浸水等の甚大な被害をもたらしました。特に、埼玉県東村(現加須市)新川通地先の堤防決壊による氾濫は埼玉県東南部の町々を次々と濁流に巻き込み荒川の堤防が決壊した濁流とあいまって、さらに、東京都との境界に位置する大場川の桜堤を決壊させ、遂には、東京都葛飾区、江戸川区にまで達しました。
この洪水により、利根川・荒川の堤防がひとたび決壊すると、その洪水流は東京都内まで達し、首都圏内に甚大な被害を発生させることになると、国民の皆様の脳裏に焼き付けた大災害でした。

かつては、水害を「我がこと」として捉え、自ら対処しようとする意識が社会全体に根付いていました。ここでは、水害に対する先人の取り組みについて紹介したいと思います。

■水塚

利根川中流部、渡良瀬川、思川、巴波川、荒川流域等の低地帯は、「水塚(みずか)」と呼ばれる建物が数多く分布しています。これは母屋の背後に2~3m土を盛り、石を積んで、そこに米や重要な生活物資を格納する土蔵や物置を建て、これを洪水の際の避難部屋にも兼用したものです。この水塚と同じ機能を持つ建物は、木曽三川流域や淀川流域、信濃川流域でも見られ水屋(みずや)、水倉(みずくら)などとも呼ばれていました。

■揚舟

揚舟はふだん家の軒か、納屋のオシロの梁に、太い麻縄等で吊り下げておきます。水害時に住民、家畜、穀物当を水塚へ運んだり、近くの高台へ運んだりしました。

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■水災予備船

荒川の中流域に位置する川島町は、東に荒川、北に市野川、南に入間川、西に越辺川と町名のとおり、川に囲まれた地域です。過去の度重なる水害への備えとして洪水時の救助・運搬用の水災予備船を造りました。記録では伊草村4艘、三保谷村12艘、八ツ保村8艘が建造され、現在でも八ツ保地区の下八ツ林薬師堂に現存しています。この周辺の地域は、舟運で栄えた地域でもあり、船大工もおりその他に村や個人で準備している方もいました。川島町では歴史を知ってもらい、防災意識をさらに高めるため今後は川船の管理と展示を継続しています。

  • 下八ツ林薬師堂

  • 水災予備船

出典:http://www.ktr.mlit.go.jp/arajo/arajo00585.html

水防災意識社会再構築ビジョンの概要

国土交通省では、関東・東北豪雨を踏まえ、2015年(平成27年)に「水防災意識社会 再構築ビジョン」を策定し、全ての直轄河川とその沿川市町村において、2020年(平成32年度)を目途に、水防災意識社会を再構築する取組を行うこととしました。
新たに各地域において、河川管理者・都道府県・市町村等からなる協議会等を設置して減災のための目標を共有し、ハード・ソフト対策を一体的・計画的に推進することになっています。
ここでは、「水防災意識社会」の再構築に向けた国の取組を紹介します。

■「水防災意識社会再構築ビジョン」について

http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/pdf/saikouchiku_v.pdf

■「水防法等の一部を改正する法律」について

http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizukokudo02_tk_000001.html

■大規模氾濫減災協議会制度について

http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/pdf/hanrangen.pdf

■「水防災意識社会」の再構築に向けた緊急行動計画について

http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/pdf/koudoukeikaku.pdf

身のまわりの水害リスクを調べる

近年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化する中、その被害を最小限にするためには、施設整備による対策(ハード)だけでなく、ソフト対策との組み合わせ、住民のみなさん一人一人や企業などが平時より水害による被害のリスクを認識したうえで、災害時における危険箇所やその可能性に関する情報を知っていただくことが何より重要です。
ここでは、あなたがお住まいの近くにある「川」について、あなたがお住まいのエリアの自然災害リスク情報について、知る・学ぶ各種のコンテンツについて紹介します。

■川の防災情報

水に関するあらゆる情報をリアルタイムに入手することができます。
●水位雨量を知る
●ダム情報を知る
●各種災害速報を知る
●浸水想定区域を知る
今すぐ確認
http://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do?dstrCenter=yes



■気象庁 防災情報

現在の気象観測情報と予報を学ぶ。
●気象を知る
●地震・津波を知る
●天気予報を知る
今すぐ確認
http://www.jma.go.jp/jp/warn/






■わがまちハザードマップ~地域のハザードマップを入手する~

各市町村が作成したハザードマップへリンクします。地域ごとの様々な種類のハザードマップを閲覧できます。
●ハザードマップを見る
今すぐ確認
https://disaportal.gsi.go.jp/






■重ねるハザードマップ~防災に役立つ情報を地図に重ねて表示~

浸水想定区域や道路情報、危険箇所などを地図や写真に重ねてシームレスに閲覧できます。
●洪水を知る
●土砂災害を知る
●津波を知る
今すぐ確認
https://disaportal.gsi.go.jp/





■地点別浸水シミュレーション検索システム

河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域及びその区域が浸水した場合に想定される水深を浸水想定区域図として公表しています。
●想定破堤点を知る
●浸水想定区域を知る
今すぐ確認
http://suiboumap.gsi.go.jp/


■タイムライン

タイムラインとは、災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画です。防災行動計画とも言います。
国、地方公共団体、企業、住民等が連携してそれぞれタイムラインを策定することにより、災害時に連携した対応を行うことが可能となります。
●タイムラインを知る
●タイムラインを作る
今すぐ確認
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/index.html

コラム:三匹の獅子舞(埼玉県三郷市)

埼玉県三郷市は、以前「二郷半領」と呼ばれ、農民は水害に苦しめられてきました。特に江戸時代、文化4年(1807)6月の大洪水の時には猿ヶ又(現・水元公園)の桜堤を破壊しなければ死者が出るという状況の中、農民は決起しました。しかし、桜堤の警戒は厳重であったため、暗い夜に乗じて、小船の先にかがり火をつけ、三頭の獅子頭を乗せて漕いでいき、警戒の人々が逃げ去ったところで、桜堤を切り開いて苦難から救われたという伝説が残っています。
この伝説になぞらえて、庭目「刀懸かり(かたながかり)」の時には、左右の茶碗に水をたたえ、桜堤に見立てた桜の木を渡し、桜堤を切り開く様子が演じられているのです。